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DOUBLE ICE


夏、執務室は凄まじい暑さになる。もちろんどの隊も共通の問題であった。
しかし、氷雪系の斬魄刀を持つ隊は、その人物が隊長であろうと平隊員であろうと、執務室で作業する隊長・副隊長の為に、その力を役立てるのだ。
今知られているのは十番隊と十三番隊。十番隊は隊長、日番谷冬獅郎。そして、十三番隊は朽木家の朽木ルキア。この二人は、今、尸魂界でとても有名だ。
氷雪系最強の斬魄刀・氷輪丸を持つ、十番隊隊長、日番谷冬獅郎。そして氷雪系最美の斬魄刀・袖白雪を所有する、十三番隊にして貴族である朽木家の朽木ルキア。
二人は滅多に話さないので、お互いの斬魄刀をよく知ってはいなかった。
そんなある夏の暑い日、十番隊に客が来た、という事で執務室で唸っていた副隊長の松本乱菊はようやく暑い執務室から出られるとそそくさと来客に挨拶しに行った。
何故、冷房代わりに隊長が斬魄刀を使わないかには理由があった。

「まったく、氷輪丸に頼りすぎなんだよ、アイツは。少しは暑くたって、我慢しろっての・・・。つーか俺も暑いぜ・・・・・・。俺は暑いの大の苦手なんだよなぁ。ったく」

普段から氷輪丸と戦っている為、寒い方に慣れてしまい、今は夏が大の苦手となっていた。
別に氷輪丸が悪いわけでもなんでもない。そう言い聞かせながら氷輪丸に話しかける。

「なぁ、暑いよな、お前だって。暑い時に出したりなんかしたら溶けちまうか?」

そう言いながら自らの霊圧を斬魄刀に流し込む。自分の霊力で覆えば、斬魄刀の中で眠る氷輪丸も少しは涼しくなるのではないかという日番谷の考えであった。そして、自分の身体の周りにも霊圧を集めていた。

「はぁ、少しは涼しくなったかな」
「たいちょーーー!大変、大変!!」
「んだよ、松本」

暑くてうだりながら来客に会いに行ったかと思ったら、今度は血相を変えて暑い中走って執務室に飛び込んできた。隊長とかが来たのかと聞こうとすると、松本は汗を拭い、日番谷に状況を説明した。
それによると、来客は十三番隊の朽木ルキアで、一週間後に十三番隊で夜間の祭りが行われるそうだ。十三番隊で行事が行われるのは実は凄く久しぶりの事。おそらくみんなはりきって準備しているに違いない。

「暑いのによく働くな、十三番隊は」
「違うのよっ!なんとそれに雛森も恋次もイヅルも誘われてて、雛森はイヅルにすでに一緒に行かないかって誘われててっ!それをわざわざルキアが伝えに来てくれたのよ、遥々暑い中十番隊へ!」
「なんだと、雛森が吉良・・・と?」

絶句しながら松本に指示を出す。

「松本、悪いが今すぐ五番隊へ急げ。俺たちも行って良いか雛森に聞いてくれ。三番隊は良い。絶対断られる」
「了解」





それから一週間は日番谷にとってあっという間であった。
当日、五番隊に集合だった。十三番隊へは意外とここが一番近いらしい。そこへは一番に辿り着いた日番谷と松本、十番隊代表の二人は、雛森を探していた。

「うおーぃ、雛森ぃ!いねぇかぁ?」
「あっ日番谷君、乱菊さん、早いですね」
「おぉ、雛森。・・・・・・か、可愛いじゃねぇか」

祭りと知っていた雛森は可愛らしい着物を着てご登場。褒められた事が少しもどかしく、照れたように笑うと、松本に目を移した。

「乱菊さんもお素敵ですね」
「あら、雛森には劣るわよ。私は見た目だけ」

悔しいわね、と日番谷を睨みつける。日番谷には自分の容姿など全く目には入っていないようだ。先程からずっと雛森から目を離さないでいたのだ。
気がつくと、五番隊の外には恋次が手を振っていた。

「おーい、雛森ー!イヅルも来てるぞ!!」
「あ、今行く!行こ、日番谷君、乱菊さん」
「はいはーぃ☆」
「さて、行くか」

三人が恋次とイヅルの前に出てきて、二人が驚いたのは言うまでもない。日番谷、松本は前は十三番隊の夏祭りツアー(?)には名前がなかったはずだった。

「ゴメンね、乱菊さんがどうしてもって言うから呼んじゃった」

十三番隊へ向かう道中、雛森は後ろを振り返って恋次とイヅルに説明していた。

「悪いな、二人とも。邪魔なら今すぐ・・・いなくしてやるからな

後半は雛森に聞こえないよう、小声で、それもほとんど口パクに近い状態で言った。その言葉の意味と、日番谷の怪しい表情で、邪魔だとは言えないし、しかも上司だ、身長が身長でも信じられない事実だ。上司は上司なのである。
うな垂れながらも十三番隊夏祭りツアーメンバー5人は着々と十三番隊へ近づいていた。



「待っておりました、日番谷隊長」
「おう、呼んでくれてサンキューな、朽木」
「いえ。心配するだろうと思って、お伝えしたまでです」

十番隊の日番谷と松本、そしてルキアにしかわからない会話。それが何故かむかついた恋次とイヅルである。

「あの、もう既に始まってしまっていますが、どうぞご自由に」
「おい、バーベキュー行こうぜ!!」

恋次とイヅルはバーベキューの煙の立ち込める方へ歩きながら、振り返ってこちらに手招きしている。

「隊長、行きましょう」
「俺は・・・あまり暑いのも嫌いだ」
「あら、猫舌?」
「それもあるが・・・・・・」

ルキアに目を向け、その後の台詞をどうしようか迷っていた。

「暑いのは苦手だそうです。私もそうなのでな。氷を操る者としてはな、暑さだけは好けん」
「そっかぁ。じゃあ、隊長。大丈夫です、あいつらは私がよく監視しておくから」
「頼むな」
「そのかわり給料あげてくださいねーー!」

それは無理だ、と手を振って、この後どうしたものかと少し段になった所に腰を下ろした。
その横に、ルキアも腰を下ろす。

「日番谷隊長も、暑いのが苦手なのですか」
「あぁ、まぁな」
「それでは、アイスはどうです?奥にありますが」
「いいのか?」
「はい」

お言葉に甘えて、と日番谷は案内される道を歩く。十三番隊はよくあがらされたものだ。ここの隊の隊長は人懐っこく、そして何故か日番谷に付きまとう、浮竹十四郎。
彼曰く、「同じシロちゃんだから」とか色々だ。もう聞き飽きて耳にタコができそうだ。
まぁそれで十三番隊の中へはしょっちゅう十番隊日番谷隊長が入り、そして憧れている輩はその後を追って声をかけてくる。それがウザくてあまり好けなかったのだが・・・。
今はそんな輩はいない。外に出てバーベキューやら金魚すくいなどなど娯楽で楽しんでいる。今はとりあえず暑さしのぎで楽しむしかないか、そう腰に下げた氷輪丸をさすりながら思っていた。

「こんな所まで持ってきてるんですね、日番谷隊長」

氷輪丸をさするのを見、ルキアは話しかける。どうやら奥とやらに着いたようだ。

「あぁ。何かあっても困るしな」
「盗まれたり隠されたりしたら嫌なものだしな。はい、アイスです」
「おぉ、サンキュ」
「それは、抹茶味というやつらしい。尸魂界では新商品だな。抹茶は渋いし、隊長も大丈夫でしょう」
「あぁ。あまり甘いのは苦手だしな」

ルキアは既に現世に赴いている間に一護と共に食べた事がある、と懐かしげに呟いた。
あの頃は自由気ままに過ごしていた。一護と共に、様々な敵を倒していた。そんな懐かしく思うくらい昔の話ではないのであるが。こうして懐かしい味を見ているとそう思ってしまう。
「朽木、お前のは何味なんだ?」
「わ、私のは・・・メロン味です」

食べながら日番谷は自分とは色の違うカップを持っているルキアに尋ねていた。

「へぇ、じゃ味見させて貰うぜ」
「え、いや、ひつがやたい・・・・・・・・・!」
「んまい」

自分の唇に合わせられた年下の隊長の唇に驚きを隠せないでいるルキア。まさか、味見と言って、日番谷隊長がこのような事をするなんて、と目を見開いていた。
それを見て、日番谷は呆れたように呟く。

「あのな、キスするときは目、閉じろよ」
「いえ、あの・・・味見するおつもりだったのでは?」
「いいじゃねぇか。味見できて、そしてアイスは減らない。一石二鳥の味見の仕方なんだぜ、これ」
「それとこれとはっ!!」

ルキアは顔を真っ赤に染め上げて首を横に振っていた。自分のファーストキスであった、それが理由。

「ま、嫌だったなら悪いな。俺、これを雛森に教えてもらってよ、なるほどなって」
「雛森、副隊長にですか?」
「あぁ、このくらいの時期、だったかな・・・・・・」



日番谷と雛森がまだ幼少だった頃の夏。二人で同じようにアイスを食べていた。
日番谷がバニラで、雛森がストロベリー。仲良く食べていたが、日番谷の頬に溶けかけたバニラアイスがついているのを見た雛森は、味見して良いか日番谷に微笑んで尋ねる。それを日番谷が拒否するはずもなく、頷いて自分のアイスを差し出した。
しかし、雛森はその差し出されたアイスを通り越し、日番谷の頬についていた溶けかけたアイスをペロリとなめた。

「え?」
「ついてたの。溶けそうなアイスが。ねぇ、知ってる?味見には二つあるの。一つは食べる方。ただ、それだとアイスが減っちゃうでしょ?でも、さっきの方法ならアイスを減らす事なく味見する事ができるの」



「・・・というわけだ」

説明しながら日番谷はアイスを食べ終えた。それを聞きながらルキアもアイスを頬張っていた。何があっても暑くて耐えられなかった二人であった。

「なぁ、朽木」
「なんだ、十番隊、日番谷隊長」
「んだよ、堅苦しい。まだ怒ってんのか?」
「怒ってなどおらぬ」
「じゃあ訊くが、今空飛びたいか?」

何故唐突に、そう尋ねようとしたその言葉は、差し伸べられた日番谷の左手によって遮られてしまった。
その手の意味するのはすぐにわかった。右手は斬魄刀を持っている。

「まぁ、たまにはいいな、空を飛ぶのも」
「よし、決まりだな。外出るぞ」

二人は手を引き、十三番隊の裏の入り口へと向かった。
そして、日番谷は斬魄刀の名を呼ぶ。

「霜天に坐せ、氷輪丸!」

突如十三番隊の上空には大きな、この季節には不釣合いな氷の龍が現れた。バーベキューをしている連中にも見えるほど巨大な龍だった。
そして、そこには十番隊の日番谷隊長がいる、という証明をしていた。

「行くぞ、ルキア」
「あ、あぁ」

差し伸べられた右手を引いて、ルキアは日番谷と共に氷輪丸の背中に飛び乗った。

「隊長・・・これは、その・・・・・・」
「大空デート。まぁ夜だがな」

暗くて下にいる連中には見えないだろう、そう思って日番谷は振り返った。
熱くキスを交わす二人だが、どうにも涼しく感じられるのは、あの龍のせいなのだろうか。


後書き
えー、第二弾の拍手小説です。日ルキにしてみましたぁww
なんだか日雛が見え隠れするなかの日ルキになってしまってて本当に日ルキかは疑問な作品にlllorz
駄目駄目じゃん;
これからは頑張って日ルキ書けるようにしてみせますので好きな方待っててくださいね><気長に(-_-;)

今回は何だが毎日のように多かれ少なかれ拍手を頂いていましたぁ^^
ヒツと一緒にパチパチしてくれた方、本当に有難う御座いました><



UPDATE:2006.10.06
ルミガンで素敵なまつげ