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Happy Snow


暗い夜道を歩く少女。こんな時間に出歩くような人ではないのだが、今日は特別な用事があるらしい。
死神として、そして護廷十三隊副隊長として名を上げていた彼女は、先程まで書類整理に追われ、なかなか仕事を終わらせられず、家に持ち帰ってまで書類整理をする羽目になっていた。
しかし、何事もしっかり取り組む彼女なので、その仕事は数時間ほどで終わり、夜になってようやく出かける事が出来た。急いでいたそのわけは、日付けが変わる直前までに、着きたい場所があるからだ。



「寒いなぁ、雪降りそうだよ」


先程までいた自室は暖房をつけていたので温かかった。しかし、それが逆に出かける時は尚更外が寒くなるようにする行為なのであった。
だが、実際今夜の気温は今までより遥かに寒く、マフラーなしではとてもじゃないが外を歩く事は出来ないほどである。なので、完全に手足は冷えきっている。その手をさすりながら目的地へ向かう彼女の桃色のマフラーが、冷たい風の訪れを象徴するかのように揺らめいている。




12月19日夜11時過ぎ。少女は桃色のマフラーをして、包装された箱を手にして家を出た。目的地まで普通に歩けば30分ほど。走れば温まるし早く着くのだが、気持ちが落ち着かないので歩いていく事にしたのであった。
しかし、家を出てから十分後、一時的であるがその足を止める羽目になった。
チラチラと白い冷たいものが空から舞い降りてきたからだ。踊るように落ちてくるそれを掌で受け止める。しかし乗ってすぐ透明な水へと姿を変えたそれは、紛れもなく雪である。

「よりによって今日か」

もう時期日付けが変わる。それから降り始めれば祝い事は二つになっていたのにな、そう考えながらまた足をすすめる。目的地まで、あと少し・・・。そして後数十分で日付けが変わる。早く、会いに行きたい。胸ポケットにしまった包みが私の歩調を速めた。







コンコン


コンコンコン



コンコンコンコン


「ん?誰だ?こんな時間に」

日の入がもう一年で一番早い日が近づいているので、どの隊も早く切り上げ、残りは自宅で、という対策をとっていた。勿論彼のまとめる隊でもそうだった。



彼は護廷十三隊隊長、という立ち位置。もちろんその持って帰る書類の量は、普段なら半端じゃない量なのだが、明日が明日なので、副官はわざと少なめに渡した。
そのいつもより少ない書類をまとめていた彼だが、もう寝間着だった。一枚だけしか着ていないが、この部屋もまた、暖房がきいていたので、全然平気だったのだが、客人が来ると部屋から出ていかなければならないので、勿論傍には上着を置いていた。



コンコン・・・コンコンコン

「今行く、少し待っててくれっ!」

誰が外にいるかわからないが、とりあえず声をかける。悪い奴だったらすぐに始末出来るよう、斬魄刀も携え、準備万端。
彼は恐る恐る玄関の扉を開けた。

「誰だ?」

この家は外灯がないので、相手の顔がよく見えない。明るい所から出てきたので尚更だ。しかし、相手は少女である事はわかった。長い髪が風で揺らめいていた。ようやくこの暗さに慣れてきた頃、相手は顔を上げる。

「こんばんは」

この声を、久しぶりに聞いた気がした。相手の少女はしばらく任務や仕事に追われて自分の隊に遊びに来る回数が格段に減り、数日前からは全く来なくなってしまった。
そして来客が彼女であった事に驚き、他に目を向けた時、雪が降っていることにようやく気がついた。

「と、とにかく中に入れよ」
「じゃあお邪魔します」





さて、今まで言い忘れてましたね。二人が誰であるのか、という事を。
まず、暗い夜道を歩いてきた少女は、五番隊副隊長の雛森桃。だから、桃色のマフラーなのです。黒い髪を長く伸ばした彼女は、普段は団子で後ろでまとめているのだが、今はそれをほどき、結んでいない。
そして訪問した家の少年は、十番隊隊長の日番谷冬獅郎。彼は史上最年少で隊長となった少年だ。銀髪をツンツンに尖らせた彼は、小さくても目立つ少年。あ・・・怒らないで、隊長っっ!!刀抜かないで下さいっ!!・・・・・・皆さんは、決して彼に向かって小さいとか言ってはいけませんよ?





「どうしたんだよ、こんな時間に。もうすぐ日付け変わるだろ」

自室へ誘い入れ、温かいお茶を客用の湯飲みに注いで差し出す。身体が完全に冷えきっていたから。
暖房の前に座り込み、雛森は渡された温かいお茶を飲んだ。

「湯加減は平気か?」
「何、その風呂の温度訊いてるみたいな訊き方」

日番谷は、そう言われてようやく気づいた。自分の訊き方だと、そう取られる、という事に。しかし、それをうまく誤魔化してもう一度訊く。

「猫舌のお前でも飲める温度だよなって訊いてんだっ」
「うん、大丈夫。いつもごめんね」

自分が猫舌で熱いのを飲めない事を考えてくれていた事に有り難く思い、またお茶をすする。
雛森は時計を探すべく部屋を見回した。そして机の上に置かれた置時計を見つけ、時間を確認した。まだ、10分ある。なんとかこの10分をやり抜かなければ、そう思って日番谷の書類を覗き込んだ。

「ところでお前、何しに来たんだ?まさか道に迷ったとか?」
「雪降ってたからって、遭難じゃないって」
「わりぃわりぃ。で、用件はなんだ?」
「うっ」

いきなり困った。本当昔から日番谷は勘が鋭く、いつも私の心を見抜かれていた。今回ばかりは、なんとかうまい口実を作り、しばらくここに居させてもらわなければ。しかしこういう事を考えるのはあまり上手くない雛森は、目を泳がせていた。

「五番隊でなんかあったとか?それとも家族と喧嘩になって家を追い出されたとか?」

前者はまぁ許せる質問だ。だが、後者はどうだ、まるで子供扱いだ。
確かに雛森はまだ子供だが、相手の日番谷の方が年は下のはず。そんな事心配されるほど・・・・・・でも、と雛森は少し考え、口を開く。

「そ、そうなの・・・。ちょっとお母さんと言い合いになってむかついてここ来ちゃった」
「はぁ!?ここはお前んちじゃねえぞ!!」

自分でも分かっているのだが、こういうムードだと冷静になれない日番谷は、すぐ怒鳴ってしまう癖を何とかしたい、といつも思うのだが、どうしてもまたこんな場面で怒鳴ってしまった。

「わ、わりぃ・・・怒鳴るつもりじゃ・・・・・・」
「ううん、いいの。私が悪いんだし」


あと5分。チラリと日番谷の背後の時計で時刻を確認する。
当の日番谷は明日・・・といってもあと5分だが、何の日かわかっているのだろうか?自分にとっても大切な日であるはずなのだが・・・・・・。
日番谷は自分の悪い癖を直したいんだ、と雛森に語り始めた。しかし、雛森は机の上に整頓されて積み重ねられている書類を指さし、早くやりなよ、と促した。あと4分、黙って彼の話を聞いていられる自信がなかったから。
お茶をすすり、日番谷の進める筆をただボーっと眺めていた。




12月20日午前零時。ようやく日付けが変わった、と雛森は口を開いた。

「ねぇ、日番谷君。日付け変わったよ」
「・・・それが?」

いつもこうやって書類をまとめて気づけば12時を過ぎ、日付けが変わるだけで、日番谷にしてみればなんてことはない事である。それを今更なんだと言うのだろうか。

「やだ、忘れちゃったの、今日が何の日か」

日番谷はなんのことかわからず、首を傾げている。まったく、と雛森は胸ポケットから包装された箱を取り出した。
もう、何の事かわからないとは言わせないぞ、とその箱を日番谷の机の上にチョコンと置いた。

「何のつもりだ。ビックリ箱だろうと驚かないぞ」
「ほ、本当にわからないの?」

雛森は何処まで忘れちゃったんだよ、と肩を落とす。まぁ毎年の事なので構わないのだが。いつもこの日になるとプレゼントと共に教えていたから。だから、今年はこの日になる瞬間を共に味わいたくて家に押しかけてきたのである。
日番谷のキョトンとした表情・・・拝めるのは私だけ。それだけで充分なのだが、まだ伝えてない事があるからね。
何もわからない日番谷の手を握り、顔を見つめた。いきなりの事で動揺しきった顔をした日番谷も面白いな、そんな事を考えながら言った。


「お誕生日おめでとう、シロちゃんww」


彼の冷たい手を、両手で握った。この手は、私が温めてあげるよ。そう思いながら。
もう一度日番谷の表情を窺った。すると、彼は目を思い切り見開き、私を見据えていた。

「ど、どうしたの?」

ちょっといつもより目を開いていて逆に雛森が驚いてしまった。



「いや・・・忘れてた。最近お前十番隊こねぇし・・・・・・驚いて、さ・・・」


ボソリボソリ喋っているが、周りは静かだからよく聞こえる。


「いきなりうち来るからちょっと嬉しくてよ・・・」


部屋が温かいからだろうか、微妙に頬が赤くなってきている気がする。


「したらなんか可愛く包まれた箱が出てきてさ・・・・・・」


顔だけ赤っぽいけど手はまだ冷たいなぁ


「お前の笑顔に動揺して・・・・・・」


この手はちゃんと温めるからさ、そのかわり・・・


「・・・・・・こんな形で祝われたの、初めてだ」


私の心を・・・・・・・・・


「ありがとう、それと・・・素直に言うよ。今まで伝えられなかったんだけどさ・・・・・・」


芯まで・・・・・・・・・


「・・・・・・ずっと前から・・・」


私の全てを・・・・・・・・・


「好き・・・・・・だった・・・・・・・・・っ!!」



温めてっ!!!!




日番谷は思い切り雛森の身体を自分に引き寄せた。彼女の心まで温めるように。もう、自分のもとから離れないように。今まで追ってきた傷を埋めるかのように・・・。

「プレゼント・・・お前で充分だよ」

息が吹きかかるほど近くで囁かれたその言葉は、雛森の抱き返しによって成立され、日番谷の史上最高の誕生日プレゼントとなった。
そして窓の外には、二人を温かい心へ結びつけた雪が降り積もっていた。




KISS FOR YOU 好きだから

I LOVE YOU 愛してる

この世界でお前以外の何も 俺には必要ない

タダ欲しいのはお前の心 ただそれだけだから


後書き
何だコレ!!!?
と思った人も多い筈・・・・・・むしろ私がそう思った。テスト終わった直後に書いたんですが、我ながら凄いストーリーだと思う。
ラブすぎるぜ、この二人・・・・・・。近寄れないぜ・・・・・・・・・・・・
まぁひっつん誕生日、おめでとう!!
そして無駄に長い小説、ここまで読んでくれて本当にありがとうございましたm(_ _)m
そんな貴方にかんぱーーいっ(*^^)/▽☆▽\(^^*)
一緒に日番谷誕生日祝いましょう♪♪


UPDATE:2006.12.16

ルミガンで素敵なまつげ