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夢の中で
私は雛森桃。五番隊の副隊長を務めています。副隊長の座まで進めたのは、私が五番隊隊長の藍染隊長を尊敬する気持ちが強かったから・・・。でもつい先日、その思いは踏み躙られてしまった。
それから私は永い眠りについた。私は夢の中、もう尸魂界へ魂は戻れないかもしれないと思っていた。
その時、夢の中である人の声が聞こえた。それは私が思い続けている人・・・。彼の名は日番谷冬獅郎。この名を知らぬ者はいない筈・・・。私は、彼と今まで、どう接していただろうか。
その時、私は夢の中で彼の声を聞きながらこんな事を考えた。
一番私を信じて、護ろうとしてくれていたのは誰だろう?
ただそれだけ考えた。その答えに漂着するまで、長い時間がかかった。もう、彼の声は聞こえない。隊舎に帰ったのだろうか。
答えを導くまで時間がかかったが、答えはやはり、一つだけしか存在しなかった。
守り抜こうとしたのは、やはり、私の思っていた彼なのだから・・・。
その時、私は必死に目を開けようと努力したが、自分の身に感じた威圧感で、なかなか目を覚ます事が出来なかった。
――何だろう、この威圧感・・・――
何か、話し声が遠くの方で聞こえる・・・。
「おい、通してくれ!!」
「駄目です・・・。この時間は、彼女に会わせる事など出来ません・・・。後日、またお越し下さい。」
「何でだ!俺はさっきアイツに約束したんだ!!仕事片づけたらここに戻るって!」
「でも困ります。ここ、四番隊に居る間は私、四番隊隊長卯ノ花烈の言う事を聞きなさい。さもないと、日番谷隊長だからと言って容赦はしませんよ?」
――日番谷君が大変だ。私が起きないと、日番谷君が・・・――
そう思っていても、やはり目は開かない。卯ノ花隊長の霊圧が、あまりに大きい。隊長達の霊圧は、私でも苦しい。それでも、私は彼の霊圧だけは平気だった。
卯ノ花隊長の霊圧に少し混じって、私の元に届いたその霊圧は、紛れもなく彼のものだ・・・。
――起きなくちゃ――
「あああぁぁぁぁぁ!」
「雛森っ!?」
卯ノ花隊長を振り切り、私の叫び声を聞いた彼は、私の傍らまで走って来た。私の手を握るその温もりは、彼のもの・・・。忘れる事など出来ない。私の待っていた者は、彼なんだ・・・。その時初めて彼の大切さを感じた。
「雛森っ!大丈夫かっ!?」
心配してより私の手を強く握ってくれる・・・。
――大丈夫だよ、日番谷君、そこにずっと居てくれればちゃんと起きれるから――
そう思った数秒後、私の視界は定まった。
「日番谷・・・君?」
「・・・!雛森!大丈夫かっ!!?」
私は目を覚まし、起き上がって久しぶりに彼の顔を見た気がした。心配そうな表情をした彼・・・。彼の、笑顔を見たい。
そう思って私は笑顔をして見せた。すると彼の目が潤んで見えた。
「心配したじゃねぇかっ!」
彼は突然私に抱きついた。その時私は部屋の入り口付近を見たが、先程聞こえていた卯ノ花隊長がいなくなっている。
「どんだけ心配したと思ってんだよっ!」
「ご、ごめん・・・」
涙を隠す為に私に抱きついた事が今、分かった。彼は私の耳より後ろで喋っていた。声で分かる、泣いてるって事・・・。
私だけ辛い思いをしていたわけではない。彼はきっと、私以上に辛かったのかもしれない。
彼は私の夢の中でしか知らなかった。あの夢は、眠りについていた私の身体が聞いていた会話だったのかもしれない。長い間、彼の事を一人にしていたんだ・・・。
「もう・・・大丈夫だから・・・・・・だから、もう泣かないで?」
もう、大切な人を失いたくない。そう思った。今、私が一番失いたくない人・・・それは貴方・・・。
「日番谷君・・・、もう、一人じゃないからね。」
夢の中の彼を思い出しながら、私は優しく、彼を抱き返した・・・。
後書き
はい、雛森が目を覚ます小説二つ目かんせ〜い!!えー、ロマンチック過ぎでしょうか??
本当こんな目覚め方してくれたら二人とも気持ち良いでしょうに・・・。・・・無理か。
だってねぇ、ジャンプ読んだ人は分かるかもしれないけど雛森は目の前の幼馴染みに興味ナッシングっぽいし。
軽く悲しいよ、幼馴染みとして。あー、ヒツは苦労人ですね〜。(人事)
UPDATE:2006.04.29