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ナカマ
一人総隊長に任務を依頼され、なんのためらいなしに承諾し、現世に赴いてもう一週間が経過しようとしていた。しかし虚の数はいっこうに減らない。そんなとある日、また虚と戦っていると知っている奴の声がして、彼は振り返った。
「冬獅郎、助けに来たぜ」
「黒崎!・・・・・・日番谷隊長だって何度も言ってるだろ!」
その返事に気づかなかったわけではないのだが、黒崎は大きな刀を抜いた。
その後、二人で日番谷の任務をこなしていた。しかし日に日に虚のレベルが強くなっている気がする、格段に・・・・・・・・・!
「大虚(メノス)か・・・!」
目の前に現れた大きな虚、大虚・・・。しかもその中の真ん中くらいの技量を持つ、「アジューカス」と呼ばれる階級の大虚であった。奴らの知能なら、質問に答えることは出来るだろうと踏んだ日番谷は、何の目的か尋ねた。すると、案の定すぐ答えてくれた。
「我らの狙いは貴様だ、黒崎一護。今この辺で一番霊力高いからなぁ。へっへっへ」
やはり、と日番谷は舌打ちする。何となく察してはいたのだ。黒崎と行動を共にしてからはギリアン級に何度かやられかけていたが、日番谷にとっては敵ではなく、すぐ倒せたのだが・・・。
しかし大虚はついでに死神である日番谷も食らおうと企んでいるだろう。
「まずいな…」
いつの間にか三体に囲まれていて逃げ場はない。倒すしか方法は残されていないようだ。
敵は自分の敵を横取りするな、と言って一体ずつの戦闘になったおかげでなんとか持ち堪えられそうだ。
しかし、気がかりな事が一つある。それは、総隊長に頼まれた時は、大虚の情報はなかった事・・・。この一週間の間に急増したとは考えにくい。一体何が起きたのだろう。
「卍解!」
初っ端から卍解する黒崎を呆気に見ていた日番谷だが、我に返って自分も刀を抜く。相手は大虚だ。始解じゃ太刀打ち出来ない事は隊長である日番谷にはすぐわかった事である。
「仕方ないか。氷輪丸、頼むぜ」
そう言って日番谷は刀を天高く飛ばすかのように上に向けた。
「卍解・・・・・・大紅蓮氷輪丸・・・・・・・・・」
すると、日番谷の身体を氷が覆う。そしてその氷がなくなった頃、日番谷の背には二枚の氷の翼、そして氷の尾、手足がついた。そう、これが氷雪系最強と謳われている斬魄刀、氷輪丸の成れの果て。威力は壮大で、限界は存在しないとされていた。
水分は大気中にたくさん存在し、本人にもどこまで戦えるのかまだわからないくらい進化が予想されていた。
日番谷の場合、卍解で戦える時間は制限されていた。すぐとどめを刺さねば自滅する。その前に卍解を解けばいいのだが、そうすると一気に霊力を失ってしまう。
「黒崎・・・・・・ちょっと下がってくれ」
言われ、黒崎は瞬歩を使い、一歩下がった。そのすぐ後、一瞬のうちにして目の前にいた敵一体が凍りつき、消滅していった。
ほんの一瞬だった。0.05秒でも遅ければ、黒崎も巻き込まれていたかもしれないほどの威力だった。こんな威力の高い技をすぐ出せた理由は、昨日から降り続けていた雨のせいなのだろう。天候によっては日番谷の勝ちだ。
そのまま勝ち進もうと思った黒崎だが、相手の技量を知った大虚もパワーをあげてきたため、少し大変になりそうだが、一対一なら勝てるかもしれない。
「そっちは頼んだぜ」
「了解」
二人は背中合わせに相手と向き合った。相手は自分達よりもでかいため、威力も大きいだろう。しかし敵の技量など大きさでは測れない事を知っている。
相手が指を動かした事が合図となり、二人はすぐに敵に突っ込んで行った。と同時に、日番谷の背後の花弁が一輪分消滅する。
「その花は、何を意味するのですか?」
「ただの飾りだ、悪いか」
と言っても相手も相当の知能の持ち主。恐らく何となく察して訊いてきたのだろう。きっとばれている。この三枚の花弁の意味する事を・・・・・・。
先日、黒崎にも自分の技について話しておいた。もしもの時は頼んだ、という事を伝えたかった。もしもの時強いのは、多分黒崎だろうと思っていたし、それに自分はもしもの時一番弱くなる、どうしようもない人間なんだ、と・・・。
――もう半分か・・・・・・
まだまだ未熟である日番谷とその斬魄刀・・・。この花の意味を知らない相手ならこの威力に驚いている隙に倒せるのだが、相手はことごとく技をかわす。このままではもう持たないかもしれない。
もう一輪の花が、散っていく・・・・・・
「くくくくくっ」
「何が可笑しい!」
「もう時期、君、死んじゃうねぇ」
「だから?」
日番谷はもう、最後の手段に出ようとしていた。その時である。
「解け!冬獅郎!!」
黒崎が必死に叫んでいる声が聞こえた。そうだ、ここには黒崎がいる・・・巻き込む可能性だってあるんだ、そう思い、最後の手段をなるべく黒崎に当たらないようにしようと、刀を敵へ向けた。
これで終わりにしようぜ、そう言って。彼は最近会得したばかりの技のお披露目をしようとしている。しかし、それは自分の命と引き換えになりうるほどのもので、黒崎のせいでと思われたくないのだが、しかし、彼を護る為なら、と・・・・・・。
「氷輪丸・・・お前に俺の全てを・・・やる!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
黒崎は自分の敵に背を向け、日番谷めがけて飛んでいく。しかし、相手のアジューカスが黒崎を後ろから叩きつけ、そのまま地上十メートルの高さから転落する。黒崎ならそれでも軽症で済むだろう、そのかわり、その位置なら巻き込む心配はない。
「ありがとう、一護・・・・・・」
卍解を解き、そして斬魄刀を、腹に突き刺そうとしたその瞬間である。
「させませんよ、隊長」
「一人で任務に赴くからこんな有様になるのよ?」
「そうだよ、もっと仲間を信用しなくっちゃ」
斬魄刀が手から放され、誰かに抱かれている。目を開けると、赤い髪が見えた。
「阿散井・・・!?に松本っ!雛森・・・?何しに来たんだ?」
「現世にて虚退治に赴任している十番隊隊長と」
「同行している死神代行の少年の二人を」
「全力で護り、敵を排除しろ!!」
「それが私たちに任された任務よ」
日番谷から斬魄刀を取り、抱きかかえているのは六番隊の阿散井。そして同行していたのは日番谷の隊の副隊長の松本と、彼の幼馴染みの雛森。そして少し遅れて到着した檜佐木、吉良。彼らは大虚が急増しているのを技術開発局から連絡を受け、総隊長から任命された副隊長たちであった。
メンバー編成に問題大有りな気がしたが、でも今にも死のうとしていた自分に活を入れてくれた事に感謝し、共に戦う事を決意した。
黒崎も、下からあがってきた。これでメンバー勢ぞろい、大虚排除組結成だ。
「日番谷君を倒そうとした事、許さないからねっ!」
雛森のその台詞が合図となったのか、全員が技を発動。
全員が同時に、そして同じ場所目掛けて技を発動すると、どうなるのか誰も知らない。しかし爆発と共に敵二体が倒れ、消滅していったのでよしとしよう。
これにて一件落着した事件の真相は、未だ明かされていない。何故急に大虚が発生したのか、それが何者かによって仕組まれた事なのか、それとも自然に出てきたものなのか・・・。わからない事だらけのこの事件だが、このあとはほとんど平和で、死神代行をやっている黒崎も毎日暇な日々を過ごしていた。
後書き
初日一。一日が好きなのですが、なんかいつの間にか日一になってしまっていた・・・・・・。攻め?お前攻めなのかっ!!?
本当は、クライマックスの副隊長たちが駆けつけてくる所を書きたかっただけの代物・・・。
しかし、管理人・冬歌が気づいた時には・・・・・・一護が参戦していた、という結果でしたorz
何、私の望みはそっち系だったのか!!?ちょっと困るよ、そんなオチ;
UPDATE:2007.03.03