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This Light I See



蹴りながら逃げている間、草むらの中に刀が捨てられているのに気がついた。隙を見て俺はそれをすぐ取り、鞘を抜いて破壊団の持つ太い棒を斬りおとした。
少し古い刀のようだが、使えそうだ。
俺は刀を操った事がないのだが、今の俺なら使えるかもしれない。どうにかして追い返さなければ。
殺さないように戦うのは大変なのかもしれない。だけど、桃の前で俺が殺し合いの喧嘩をするのをしたくない。

だから・・・・・・・・・






桃には “もう一人で大丈夫だ” と言った事がある。その時桃はどんな顔をした?
何もないような顔で微笑んだんだ。だけど、俺にはわかる。きっと自分も一人にされたと思ったんだろうなって。
だけど、心配しなくても大丈夫だと俺は思ってしまった。

だから俺は “餓鬼” だって言うんだっ

その後、桃は尸魂界へ行って死神になる事を決意した。
俺はその後姿を見送る事しか出来ず、止める事が出来なかった。いや、止める理由が分からなかった。


何で俺はこんなに無力なんだ


「どうして・・・・・・」


何で俺は無知なんだ


「行っちゃうんだよ・・・」


だから何も知らず後を追う事しか出来ない


「いつか必ず追いついて」


だけど、手の届く所に置いておきたい


「守り続けてやる」






俺は刀を鞘にしまい、それを武器として振り回す。素人だから振りが甘い。振り回されてる気もするが、守るため。なんか、今そう感じたんだ。
気を失わせるだけで大丈夫だろうと思ったから、後頭部を殴れば良いだろうと思い実行。
それは見事的中で、破壊団は倒れ込んだ。

その瞬間、拍手が沸きあがった。

この辺の人間は剣術も習ってないから誰も破壊団に歯向かえず、やられてばかりだった。俺も実を言うとこういう連中にまで絡まれたことはなかった。恐らく、それが憎くていじめてきていたのかもしれない。連中も俺のような化物に手は出したくなかったのかもしれないし、放浪している事が多くて捕まえられなかっただけかもしれない。


「ありがと、シロちゃん」


破壊団が連行されたあと、桃が駆け寄ってきた。


「私も、孤独だったの」


血の流れる頬に手を当てる。


「だから、いじめられても強く生きるシロちゃんが羨ましかった」


俺は強くなんかないのに


「だから、助けてくれて嬉しかった」


どうしてそんなに俺に向かって


「私も、シロちゃんも、もう一人じゃないよ」


微笑むんだよ・・・


「私にはシロちゃんが、シロちゃんには私がいるもんね」


何も感じず抱きしめられるんだよ・・・・・・・・・






俺は弱い。根は心細くて死にそうだったくらい孤独死しそうなくらい辛くて、もう死にたかったくらい弱い。
だけど、お前がいてくれたから生きられている。それは今でも昔でも感じていた事。だから俺を変えてくれた桃には感謝してもしきれない。
だから、俺はその夜桃に手当してもらった腕をさすりながら、天に向かって呟いた。


「守りたいものがある」


そのためには、どんな苦難も乗り越えてやる


「何よりも大切な者がいる」


手段は選んでいられない


「どうか、俺に・・・・・・そんな力を下さい・・・」


目が潤んでいて星が見えない。今日は快晴で、無数の星が空を埋めていた。呟いている間に空を駆ける一筋の光が、霞む目に映った気がした。
俺の弱い意志が、桃のおかげで強い意思へと変わった。どんな者より守りたい、と感じているし、今後も桃以上守りたい者は見つからないだろうと思う。その想いは強く、もう一生曲がらないと夜の闇へと叫ぶ。






ひょっとしてお前は、俺にとっての “光” なのかもしれない。
俺に正しい道を教えてくれる光。それを辿れば明るい “未来” を拝めそうな予感がする。だけど俺は根性なしだし自己中だし、教えてくれた通り歩めないかもしれない。その時は目を合わせて、正しい道をしっかり教えてくれ。

お前は俺 “だけ” の光。
だからお前をまた孤独のどん底に落としてしまいそうで怖い。だけど、お前にとって俺がかけがえのない存在になれば、お前は二度と孤独にはならないから、そうお前が思ったら、思い切り抱きしめてくれないか?そうすれば俺も、お前も、孤独を味わう事は二度と訪れなくなるから・・・・・・。






「どうしても強くなりたいか」


あぁ


「どうしても守りたいのか」


頼む


「自分の命よりも大切か」


当たり前だ


「ならば、私の命も、そなたにさずけよう。我が名は、氷輪丸」








後書き
初シリアスシロ桃♪自分的にはよく出来たと思っていますが、どうでしょう?
でもなんか結果的にシロ桃が日番谷と氷輪丸の絆に変わってる気がするんですけど・・・・・・その辺は申し訳ありませんorz
でも私、冬歌の小説がちょっと進化したかなって気もする。今までとは違う形態で書いてみた。
台詞の間にその人の感情を入れる小説にちょっとときめいたためと思われます(笑)
だから自分の小説にもいつか取り入れてみようって思ったんじゃないでしょうか・・・・・・。


UPDATE:2007.04.08
ルミガンで素敵なまつげ