いつも君がいて

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「雛森・・・遅くなった。本当は、もっと早く来るつもりだったんだ。」

話しかけても、こっちを向いてくれはしない。

「俺さ、もっと強くなって、いつか、世界中の誰からも護れる、お前のヒーローになってみせるから・・・だから・・・だからっ・・・・・・・・・!!」

俺は、泣かないと決めていた。だが、頬には涙が伝っていく。俺は必死にその流れる涙を止めようと努力した。でも、それは無駄な努力として終わり、俺は雛森の眠るベッドにしがみついた。

「桃っ!」

俺は無意識に雛森の名を呼んでいた。自分では気づかなかった。それに気づいた理由。それは・・・

「やめてよ、名前で呼ぶの・・・シロちゃん。」
「えっ?」

俺は驚いて顔を上げた。今まで目を覚まさなかった雛森だが、今は目を辛そうに、しかししっかりと開いて、俺の涙の流れる顔を捉えていた。

「何泣いてるの、シロちゃん?」
「お前・・・意識返ったのか!?」

雛森は優しく微笑んだ。それが合図となったのか、俺は雛森に抱きついた。雛森はそれを鬱陶しくは思わず、俺の頭を軽く撫でてくれる。懐かしい、あの頃の様な綺麗な指で俺は自分の髪を撫でられ、少しドキドキした。

「ゴメンね、シロちゃん・・・。長い間眠ってたの?心配かけちゃったね・・・」
「いや・・・確かに寂しかった・・・。でも、こうしてちゃんと意識が戻った、それだけで俺は充分だ。」
「ありがと。」

抱きついた状態の中、二人だけの時間は過ぎて行く。このまま、時間が止まってくれないだろうか。そうすれば、ずっとこのままだ。俺も休憩時間が残り・・・もうほとんどない。

「雛森・・・暫く、眠ってるフリしてられるか?」
「なんで?」
「誰にもばれない様にしてくれ。また、今晩来るから・・・」
「わかった。待ってるね、シロちゃんが戻るの。今度は私が待つ番って事ね。なるべく早く・・・ね?」
「わかってる。」

俺は自分の髪を撫でていた綺麗な手を放してその場を去った。振り返ると、雛森は早速眠ったフリをしていた。

「早く・・・仕事終わらせて、戻ってくるからな・・・」

部屋を出た所で呟いたその一言は、雛森に届いていたのだろうか・・・。

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