第一章

第一節



つい一週間前、俺たちは三年間暮らしてきた中学校を無事卒業する事が出来た。卒業したほとんどの者が何処かの高校へ進学し、新しい生活に胸を高鳴らせている頃であろう。勿論俺もそのうちの一人である。
遅くなったが、俺は日番谷冬獅郎。色々ごたごたがあって、前通っていた小学校のあるこの地に移住して、幼馴染みの雛森桃と共に小・中と過ごしてきた。そんな中、クラスメートとなった吉良イヅルと親しくなったのである。
そして小学校六年間と中学校三年間の計九年間の義務教育を終え、ようやく将来と繋がる高校へと進学を果たす事ができた。







同じ中学から同じ高校へ進学した冬獅郎と桃、イヅル。そしてもう一人、中学で桃と同じクラスになり、彼女の良き親友となった朽木ルキアである。
彼女には年が離れた姉がいて、つい数年前結婚した。姉はそのため名字は違うが、姉夫婦と今同居している。父親も母親もなくしてしまったルキアにとって、姉の夫は父親同然である。そして姉夫婦は二人とも、これから入学する高校の教師をしている。

そして今、彼ら四人はその高校へ向かっている所である。
入学する高校は、彼らの家の最寄り駅から電車で三駅、そして乗り換えて二駅で着くのだが、その駅からはバスがなく、徒歩で十五分ほどの場所。合わせて一時間程度かかる高校である。
面倒だが、都心とは反対方向なので電車はさほど込んでいないのが利点である。まぁそれを狙って学力と照らし合わせて選んだのだから当たり前の事であるが。

「日番谷君って今日の入学式で新入生代表として喋らなくちゃいけないんだよね。言葉考えてきたの?」
「当たり前だろ?なんのための春休みだ」

そう、冬獅郎は学年トップでこの高校に入学した超エリート。かなりレベルを落として入っているんだからそのくらいでないとおかしすぎる、と以前苦笑して桃と話していた。彼は幼馴染みの桃を放っておけなくてここに進学する事を決めたのが真実なのであるが・・・。


そうこう説明している間にも彼らはいつの間にやら学校の校門が見える位置まで来ていた。四人とも多かれ少なかれ緊張した顔をしている。そして自分たちの周りが先輩だらけのような錯覚に陥ってしまう。

「うわ〜〜、これからここに通うんだ。坂道多くて大変だよ」

駅からの徒歩の道のりは、曲がりくねって尚且つ坂が多い道であった。大変であるが、きっと体力はつきそうだ、と皆前向きに考えながら校門をくぐる。すると、新入生案内の看板が前方にある。行くか、と彼らは足を進めた。

「すいません・・・・・・」
「あぁ、新入生か。そこの張り紙で自分のクラス確認すんだ。確認が済んだらその辺の先輩に声かけて場所聞いてくれ。10人くらいまとめて案内しなくちゃいけないらしくてな。俺たちも大変なんだよ」

ちょっと赤みがかった長い髪を高い位置で結び、思わず「パイナップル」と叫びたくなるその先輩は、そう笑いながら張り紙を指さして説明してくれた。見かけはすごく不良っぽいが、中身は良い人っぽかった。
俺たちはその先輩の指さしていた張り紙を見に行ったのだが、既にそこは新入生の塊が出来ていて、なかなか字を読める雰囲気ではなかった。ましてや冬獅郎は背が低い方。読めるはずがない。この四人の中で一番背が高いイヅルは、自分が見てくる、と言って張り紙を見に行った。
しばらくして戻ってくると、残念そうに自分たちのクラスを発表する。

「僕と日番谷君がC組、朽木さんと雛森さんがD組だったよ」
「桃と同じクラスだな!」
「うん、よろしく!!」
「んだよ、吉良とかよ」
「それはこっちの台詞だね。なんでこんなチビと「っるせーーーーー!!!!!」

周りの新入生と先輩の視線が一気にこちらへ向いて、我に返った冬獅郎は黙り込んだ。
いつもの癖でつい怒鳴ってしまった彼の身長はやたら低い。その年のわりにやけに身長が低く、そして成長期が過ぎているので今はあまり伸びがない150cm程度の冬獅郎。
そのため彼は中学を卒業してから髪を立てるようになった。思い切って色も変えようかと思ったのだが、それは止めた方がいい、と桃に言われて色は変えなかったのだが、黒いその髪を立てただけで格好よくなってしまい、つまらない気分で春休みを過ごしていた桃であった。

「おーい、そこのちっちゃい新入生たち!何組だ?」
「ちっちゃいゆうなっ」
「わりぃわりぃ」

背後の方で声をかけてきた先輩を振り返ると、そこには明るいイメージの先輩がいた。上手く学ランを着崩したその先輩はこっちに手招きしている。

「俺は二年E組の黒崎一護だ。クラスは?」
「えっと俺とコイツがC組で、この二人がD組です」
「あ、じゃあ藍染先生のとこと海燕のとこか。良いとこ飛ばされたな」

他の生徒も連れ、教室まで案内してくれた黒埼先輩は笑顔が素敵な人で、普段から明るい性格の人である事を思わせる。
昇降口で上履きに履き替えていると、黒崎先輩は教室に靴も持って行くよう注意した。

「まだ番号もわからねえだろ?下校の時に入れるらしいから教室まで靴持ってけって言ってたぜ」

彼らはまだこの高校に未熟であり、先輩を頼っていないと過ごしていけないこの気持ちが歯がゆく、自分たちも一年後、同じ事を後輩たちにしていかなければならない現実とを見ながら教室へと歩いて行った。


「D組はこの通りの一番奥だ。Cは一階上の一番手前」
「じゃあ一番上の階なのか・・・辛いなぁ」
「だろうな。俺も同じクラスだったから始めは辛かったよ」
「黒崎先輩もCだったんですか」


教室まで案内され、黒崎先輩と分かれた冬獅郎とイヅルは、賑やかな教室に足を踏み入れた。そして最初に感じたのが教卓に腰を下ろしている先生の雰囲気だ。温厚な雰囲気を醸し出している先生は黒崎先輩が言っていた藍染先生であろう。黒板に「担任、藍染惣右介」と書かれている。
その黒板には席順が書かれていて、名前と出席番号と場所が確認できた。

「お前とははなれるな、吉良」
「そのようだね、日番谷君」

二人は入り口で黒板を見ながら会話をしていて、後ろから来る同じクラスの女子に気づかなかった。

「あの・・・・・・申し訳ありませんが・・・・・・・・・」
「あ、わりぃ」


二人は各自自分の席について教室を見回していた。教室の中心では女子たちがはしゃいでいて、そしてまばらに男子や女子が座っていたり小声で話していたりしていた。
しばらくするとチャイムが鳴り、先生が立ち上がったので、真ん中で話していた女子たちはそれぞれの席に戻った。入学式が始まろうとしているのだ。




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