一期一会の出会い

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「くそっ!思い出したくねぇ事まで思い出しちまった・・・」


気づけばもう夕刻だった。八番隊に書類を届けに行った松本は帰って来ていない。恐らく京楽隊長と酒を飲み交わしているのだろう。

窓を開けると、冷たい風に混じって雨の匂いがした。


「雨か・・・。・・・・・・・・・ん?」


遠くの方から、誰かの霊圧が近づいている。走っているような速さだ。確実にこちらへ向かっている。


「誰だ?」


窓から飛び降り、雨の中を走り抜ける人の所へは、瞬歩で二歩。


「雛森!?」
「日番谷君・・・。書類を届けに来たんだけど、雨に降られちゃって」
「とにかく、十番隊で雨宿りしてけよ。ほら」


俺は雛森の前にしゃがみこみ、背を向けた。


「え?」
「おぶってくよ。瞬歩で二歩だ」


それでも迷う雛森。俺は頭を掻き、溜息をつきながら立ち上がった。


「ったく・・・」


俺はそのまま雛森を抱いた。抱き方?現世だと『姫ダッコ』とか呼ばれてるんじゃねぇか?
嫌がる雛森を余所に、瞬歩、瞬歩。玄関前に到着した。


「着替え持ってくるから、執務室で大人しく待ってろよ?」


そう言い捨てて俺は、着替えを取りに行った。




「雛森〜、待たせたな」


着替えを抱えて雛森の待つ執務室に入った。そこには濡れた髪をタオルで乾かす雛森の姿があった。


「あ、タオル借りてるね」
「外で待ってるから、着替え終わったら呼んでくれ」


雛森に着替えを渡して執務室を出た。


暫くして、着替え終わったと中から雛森は声をかけた。


「ありがとね、日番谷君・・・。それで、これ、書類。よろしくね。じゃ」
「おい、この雨の中帰るのかよ!?今晩、泊まってけよ。そのくらいで文句言う隊長じゃねぇだろ、藍染はよ!!」


ここで、あいつの名前を出したくはなかったが、雛森をここに留めるには他に方法がなかった。


「そ、そうね・・・。でも、ひつがy・・・」
「今日は・・・その・・・・・・シロちゃんで、いい」


少し恥ずかしがりながら言った。雛森は頭上に疑問符を浮かべている。
なぜ、こんな台詞を吐いたのか?その理由は・・・・・・・・・


「今日は、俺とお前が運命的に出会った日だろ?俺は覚えてたぜ」

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