お前のために

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「・・・・・・・・・(怒)」
「乱菊さん、もういいですよ〜」
「よくないわよ!応援してる二人がこんなんじゃ仕事だって手がつかない」












十番隊の隊長であるはずの日番谷冬獅郎は、おとといから執務室に顔を出していない。どこへ行ったのかは副隊長である松本乱菊も、幼馴染みで昨日誕生日を向かえた雛森桃も知りえなかった。
大切な人の誕生日をすっぽかしてまで何をどこにしに行ったのか・・・・・・誰も知るはずはなかった。
日番谷がいない事をいい事に、昨日は雛森に多くの男たちがプレゼントを手にやってくる。最初は、いつもならあまり多くの人に貰わないので嬉しくて笑顔で礼を言いながら行く所行く所で両手をいっぱいにして歩いていた。
しかし次第に不信感を抱き、普段なら一番に渡しに来て一日中つきっきりでいてくれる日番谷の事も心配になり、正午をちょっと過ぎた昼時、十番隊を訪ねてみたのである。

「隊長?昨日から来てないのよ〜。てっきりずっと桃の所でなんかやらしい事とかしてるのかと思ってたわ」
「な、なんですか、それぇぇぇ!!?一度もした事ありませんよ!」
「でも心配ね・・・。桃にも何も言ってないで、何処ほっつき歩いてるのかしら、うちの隊長は」
「そうですよね。伝言なしに、何処へ・・・・・・」
「ここで待ってれば?」
「え?」
「きっと忘れてるのよ。そんでふらっとそのうち帰ってくるから、驚かしてやりましょ。『あなたがいない間にこんなに貰ったのよ〜』ってそのプレゼントの山指さして。きっと妬くわよ〜〜〜」

乱菊はけらけらと他人事のように言っているが、実はかなり心配している。隊長にすぐ帰ってきて欲しい、その思いは雛森より高い自信はありそうだ。

「兎に角、待ってみるしかないんじゃないかしら」
「そう、ですよね・・・」










「そこをなんとか、頼むっ!!俺はこれでも隊長だぞ!!?」
「しかし・・・そんなにはご用意できませんので・・・」
「アイツの好物なんだ!!至急調達しろ!!!!隊長命令だ」
「それでも、無理ですよ〜」

十番隊舎から程遠いはずれの店。そこは尸魂界一の甘味処として有名だ。だからこの日も多くの人で賑わっている。
そんな中、カウンターの若い女性にいちゃもんをつける少年こそ、雛森と松本が待っている日番谷である。

「じゃあ明日までになんとかしてくれ!その分の金はちゃんと用意してまた明日の今くらいに来るから」
「かしこまりました!必ずご用意いたします!!!!」

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