お前のために

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「よぉ、雛森」
「ひ、日番谷君!!?ど、何処にいたのよぉぉぉぉ」
「わ、悪い、雛森・・・泣くなよ」
「泣きたくなるわよ!!昨日どんなに寂しかったか・・・・・・」
「お前、待ってたのか?」
「当たり前よ!!シロちゃんのいない誕生日なんて、つまんないもん・・・」

翌日、非番を与えたと藍染に聞いた日番谷は、すぐに雛森の部屋へと向かった。勿論、プレゼントを持って・・・・・・。
しかし軽く声をかけただけで泣きつかれ、驚きを隠せないでいた。こんなに泣きつかれたのは初めての事であった。

「あれ?この匂い・・・・・・」
「おう、一日遅れちまったけど、誕生日おめでとう、雛森」

日番谷が持って来た大きな袋から漂っていた匂いに気づいた雛森は日番谷の腕の中で顔をあげ、ドアの前に置かれている袋へと目を移した。そこには、雛森が通いつめている甘味処の店の名前が書かれている。

「これ、あそこのだ」
「作ってもらうのに一日かかってよ、昨日持って来てやれなかったんだよ」
「こ、こんなに!?」
「お前なら食べれる」
「・・・これでも女の子なんだよ?」
「お前の誕生日会でもやってみんなで分けりゃいいじゃねぇか。楽しく食べれれば充分だろ?」
「うん、そうだよね。みんな呼ぼうよ!藍染隊長に頼んで、今日の夜!あんみつパーティー!!!」










その夜、日番谷と雛森主催のあんみつパーティーが五番隊で開かれた。野外で行われ、そしてパーティー大好きな松本が聞きつけて料理上手な九番隊の檜佐木修兵に頼んでバーベキューも行われた。
今日という一日はみんなにとって忘れられない思い出となったであろう。勿論、日番谷と雛森にとっては、そりゃもう特別に。
一日遅れだけれど想いがこもっているその誕生日会は、突然の事だったのであまり大人数にはならずひっそりと、しかし盛大に行われたのであった。










「本当、もういいですよ、乱菊さん」

いつまで経っても帰って来ないし自分の休憩時間をとっくに過ぎている。このままでは憧れの藍染隊長に怒られてしまう、と身を案じ、席を立つ。
松本は雛森の心をわかってあげられない自らの隊長に腹を立てながら雛森を送り出してやった。本当は、このまま待っていたいのだが、書類の山は数時間前から減っていなかった。しかし全くやる気が起きず、雛森がいなくなり独りとなってしまった松本はソファに横になって眠ってしまった。

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