夢の中で

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「あああぁぁぁぁぁ!」
「雛森っ!?」

卯ノ花隊長を振り切り、私の叫び声を聞いた彼は、私の傍らまで走って来た。私の手を握るその温もりは、彼のもの・・・。忘れる事など出来ない。私の待っていた者は、彼なんだ・・・。その時初めて彼の大切さを感じた。

「雛森っ!大丈夫かっ!?」

心配してより私の手を強く握ってくれる・・・。


――大丈夫だよ、日番谷君、そこにずっと居てくれればちゃんと起きれるから――


そう思った数秒後、私の視界は定まった。
「日番谷・・・君?」
「・・・!雛森!大丈夫かっ!!?」

私は目を覚まし、起き上がって久しぶりに彼の顔を見た気がした。心配そうな表情をした彼・・・。彼の、笑顔を見たい。
そう思って私は笑顔をして見せた。すると彼の目が潤んで見えた。

「心配したじゃねぇかっ!」

彼は突然私に抱きついた。その時私は部屋の入り口付近を見たが、先程聞こえていた卯ノ花隊長がいなくなっている。

「どんだけ心配したと思ってんだよっ!」
「ご、ごめん・・・」

涙を隠す為に私に抱きついた事が今、分かった。彼は私の耳より後ろで喋っていた。声で分かる、泣いてるって事・・・。
私だけ辛い思いをしていたわけではない。彼はきっと、私以上に辛かったのかもしれない。
彼は私の夢の中でしか知らなかった。あの夢は、眠りについていた私の身体が聞いていた会話だったのかもしれない。長い間、彼の事を一人にしていたんだ・・・。

「もう・・・大丈夫だから・・・・・・だから、もう泣かないで?」

もう、大切な人を失いたくない。そう思った。今、私が一番失いたくない人・・・それは貴方・・・。

「日番谷君・・・、もう、一人じゃないからね。」

夢の中の彼を思い出しながら、私は優しく、彼を抱き返した・・・。

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