悲しき現実
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学校で、久しぶりに会ったお前は、俺以上に成長していた。
友人と並んで歩き、昔から頭の良かったお前は、友人にも信頼感を抱かれ、イキイキしていた。そんなお前を見て、俺も頑張らなきゃ、と感じた。お前には声をかけずにその場を去った。
俺はおよそ4年で卍解に辿り着き、一気に十番隊の隊長となった。その頃には、もう既にお前は藍染率いる五番隊の副隊長。俺は、ようやくお前と話せるくらいの座に着いた。隊長になったお祝いに、お前は俺に会いに来てくれた。
「日番谷君、おめでとう。」
その時、俺はお前に突き放された、そんな感情を抱いた。あの時の会話が、この日の俺の心に深い傷を作ってしまった。
『じゃあ私もう行くね、シロちゃん。』
『おい桃。お前もうその呼び方やめろよ』
『じゃあ、私より強くなったら、ね!シロちゃん!!』
お前は俺より強くなったら呼び名を改めると言った。そうか、俺が隊長になっちまったんだもんな…。もう、前のようには呼んでくれないんだな…。俺は、距離を縮めるつもりであの日から過ごしてきた。そんな過去が、余計俺とお前の距離を遠ざけてしまったらしい。
あの日を境に、俺達の間には見えぬ境目が引かれ、悲しみの落とし穴の奥底へと俺は無残に落とされた。
もう、楽しかったあの日々には戻る事など出来ない。こんなにも辛くて悲しいのに、もう二度とお前に慰められない。
「ああ、ありがとう、雛森。お前も憧れの藍染隊長の副隊長、おめでとう。」
俺はいつの間にかお前の事を『雛森』と呼んでいた。前のように軽々しく、『桃』とは呼べなくなってしまったから…。
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