St.Valentine’s Day


3/3


「ひっつがやく〜〜ん!!」

失礼します、もなしに十番隊執務室に入ってきた黒髪の少女。腕に『五』のついた板をつけている。彼女は五番隊の副隊長、雛森桃。日番谷の幼馴染みである。

「何の様だ」
「何よ、チョコレート持ってきたのに〜。乱菊さんと甘さ控えめのチョコを作ったんだから。そうですよね、乱菊さん♪」
「そうよ〜〜」

だから?と冬獅郎は睨みをきかすが、桃には全くダメージなし。睨んでいるその顔にベチョ、と綺麗にラッピングされたチョコレートを押し付けた。

「はい、甘さ控えめのチョコ。貰ったチョコ全て隊員たちに分けるんでしょ?渡すなら渡しちゃってもいいけど?」

そう言われると隊員たちに渡しにいけなくなるのが心情。彼女は幼馴染みだし、友チョコ感覚で貰っておくか、そう言って桃のチョコレートは受け取った。それに安心したように桃はそそくさと自分の隊へと帰って行った。







一日が経過し、地獄蝶が各隊に転送された。そして、隊舎では町会の形に整列して、発表を待った。各隊の順位を、事前に総隊長へ報告する事になっていて、夜中のうちにみんなで数えあっていた。


「発表する」

地獄蝶から、総隊長の声が聞こえ、隊員みんな静かになった。

「今回第五位は、藍染惣右助。四位は、抜かして三位は檜佐木修兵と、日番谷冬獅郎の二人。そして二位は・・・・・・朽木白哉!そして今回二週間の休養を貰える男性死神は・・・・・・六番隊副隊長、阿散井恋次じゃ」

これにはどの隊も驚いていた。今年も冬獅郎だと思っていた人が多かったからだ。しかし今年は何故か彼は三位・・・・・・。恋次ファンが増えたのだろうか、そう思う人も少なくはなかった。
しかし、冬獅郎は嬉しかった。優勝したかったと言っていた恋次のために、チョコレートを弾き返したおかげなのだろう。
隊舎の中では、四席も冬獅郎に負けないくらいのチョコレートを貰っていた。しかし、乱菊と桃の分冬獅郎が勝ってしまった。なので、今回は惣右助が一個分四席に勝ってしまったのであった。
しかし自分が六位だと分かっただけで、彼は嬉しかった。これも全て、優しい隊長を持てたおかげだ、と頭を下げた。



その発表の後、十番隊に恋次が、二週間の休養は大切に使うようにする、と言いにやってきた。別にそんな決意なんかわざわざ言いにやって来なくてもいいのに、と冬獅郎は苦笑いをしてあしらった。
帰っていく恋次の後姿を見送りながら、本当に嬉しそうで冬獅郎も嬉しくなった。彼には、本当に幸せになって欲しかったので、嬉しい限りで冬獅郎にとってこのイベント一番の幸せとなった。

戻る
小説メニューに戻る