夏涼

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まぁそういう経緯で出来上がった十番隊オンリーイベント、銘々「氷雪朝礼」は夏の間不定期に、しかも朝礼に行われるようになったのだ。
これを知った他の隊が入ってこようとするが、あくまで十番隊オンリーイベント。まぁ外にいても涼しいが、それでも隊内の方がより気分が良いのは言うまでも無い。
と言う事で、朝礼前にきっちりと隊員たちは十番隊へと入れる所全てを封じる。軌道の上手い隊員などは誰も通行出来ないように十番隊の周りに結界まで張る。他の隊員に味わわせたくないイベントであるからだ。




さぁ、この夏初めての朝礼である。やけに中庭は賑やかだ。どうやら隊員たちが集まったようだ。

「隊長、準備出来ました?」
「あぁ」
「じゃあ今回も私が司会を努めさせて頂きます」

そう言って松本は隊長である日番谷より先に外へ出た。
日番谷はこれからの内容をまとめていた。なんてったって一年ぶり。
――まず、松本の司会の『それでは隊長!!』が聞こえたら刀を構えて、始解のかけ声。それで、十番隊の周りを一周、というのが恒例だった筈だ。
頭の中で整理をしていると、松本の声色が変化した。

「それでは隊長に出てきて頂きましょう!我が隊自慢・・・」
「「「「日番谷隊長!!!!」」」」

どうやら席をおいている何人かが声を合わせて日番谷の名を呼んだらしい。
今までとは一味違ったお呼び出し。日番谷は自分の行動も変えた方がいいのか、と迷うが時間がない。

「霜天に坐せ・・・・・・」

外へと開け放された扉に向かって刀を向ける。そして全員へと聞こえるよう大きな声で自らの斬魄刀の名を呼ぶ。

「氷輪丸!!!」

それと同時に日番谷は氷輪丸の背に飛び乗った。まぁここまでは今まで通り。

氷輪丸・・・お願いだ、隊舎の周りを飛びながら、・・・・・・・・・・・・だ。いいか?

隊員たちに聞こえないような高さで、少し小さめの声で氷輪丸に囁いた。氷輪丸はそれに小さく頷く。

隊員たちは「始まった」と大空を見ていた。そこで、多くの隊員は異変に気づいた。龍が大空を向いたからだ。

「「あ・・・・・・・・・」」

続いて氷のとても小さな粒が十番隊内に降り注がれる。

「「「うわぁ、綺麗・・・」」」

隊員たちはその太陽によって乱反射している氷に乾いた声をあげる。
隊舎をゆっくり一周し、日番谷は龍からおりた。そこはちょうど、松本がこしらえたステージの上。

「氷輪丸、ありがとう」

日番谷は刀を収め、そして大声で叫ぶ。

「十番隊の皆、元気か!?」
「「「はいっ!」」」
「良い返事だ。今日はいつもと少し変えてみたが、どうだった?」

隊長とは思えないほどさっぱりした顔で、そしてみんなと同等な感じで質問をする。

「すごく、綺麗でした・・・」

一番前の列にいた女隊員は、顔を少し赤らめ、そう呟いた。周りの隊員たちはそれを聞いてうんうん、と頷いた。

「そりゃ良かった。今日は特に説明しなくちゃいけないことはないし・・・ていうか俺が来る前に松本が全て説明してたし。それにもう充分涼しくなったしな。各自仕事に就け!」

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