This Light I See


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昔から俺は孤独に生きてきた。
何処にいてもいじめられ、その度いじめてきた奴らを怪我させて逆に俺が奴らの親に怒鳴られる毎日。
そんな毎日に嫌になり、夜風に当たりに外に出た俺。暫く細長い月を眺めていると、家の方で悲鳴が聞こえた。それは、知り得る者の悲鳴だった。

走って戻ると、今あちこちで有名な“流魂街の破壊団”の連中が、世話してもらってる雛森さんの家で棒を振り回す。それが門を壊し、母親に当たり、そして・・・・・・桃にまで当たった。

「許さねぇ・・・!」

俺は全力疾走で夜道を駆け抜け、破壊団に飛びかかった。奴らは突然飛び込んできた餓鬼を片づけるのに桃とその家族から目を離す。その隙に隠れるよう俺は目で合図した。長い間お世話になっているだけあって、俺の伝えたい事をすぐ理解し、みんな家に入って行った。
それに安心して油断した為か、俺は石に躓いた。

「もらった!」
「うあぁ!!」

俺は破壊団の棒で殴られ、そして別の奴に蹴飛ばされ、ボロボロになりながらも必死に破壊団を引きつけるべく立ち向かった。
額から血が流れる。邪魔になるから舐めれば血独特の鉄の味。意識はそれで保っていられたが、身体がついて行かず俺は倒れ込んだ。



「お前ら、ここじゃ見ない顔だ」


どうして桃に怪我を負わせた


「何の目的だ」


何もないなら帰れ


「暴れたいだけなのか」


余所でやれ。なんでここじゃなきゃいけないんだ


「アイツにはもう近づけさせねぇ」


もう二度とここに来れなくしてやる


「お前ら全員・・・」


何のために桃は、傷つかなくちゃいけなかったんだ





「消えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」





怒鳴った拍子に、口内に溜めていた血が吐き出される。むせるが気にしちゃいけない。
今は成すべき事が目の前でウロウロしてるんだ。こんな奴ら、俺一人で充分だし、俺一人でやりたい。助っ人が来る前に・・・いや、俺がやられる分には誰も困らないか。
それなら、村を守ろうとしてくれたって事にすればあんないじめには遭わなくて済むし、桃も安心して眠れるようになるだろう。
そう願って、破壊団に突っ込もうとしたその時である。

「そんな事言っちゃダメだよ、シロちゃん」
「も、桃・・・!?」

見れば、玄関に裸足で出てきて、涙を流しながら俺に訴える桃がいた。服の裾を固く握りしめ、唇を噛んで桃は必死に訴える。
俺の口癖は “皆死んじゃえ”
俺がその台詞を吐く度に桃がいつも悲しむんだった。また、俺は言ってはいけない事を言ってしまった。しかも、桃がいる事を知りもせずに。
しかし今は破壊団の連中を追い返さないとここが危ない。俺は泣いて俺を見据える桃から視線を外してまた立ち向かった。
守りたい者を傷つけた奴は許さない。
しかし、守るべき者を傷つけ続けている自分の行為には一向に気づいていなかった。俺は、まだ “餓鬼” だったんだ。





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