White Chick

3/3


西流魂街第一地区、潤林安。ここで幼い頃、冬獅郎と桃は出会い、共に助け合い、支え合い、暮らしていた。
冬獅郎は近所の人たちに避けられていたが、桃と二人を育てたおばあちゃんは冬獅郎を嫌がらず、逆にとても親しんでいた。冬獅郎と桃は姉弟のように仲良く遊んでいた。

「ばあちゃん、ただいま」
「おや、冬獅郎。迎えに来たのかい?」

昔暮らしていた家の扉を開けると、前よりも少し痩せてしまった冬獅郎達のおばあちゃんが腰をおろしていた。その傍に、桃が半分泣いた状態で座っていた。

「シロ・・・ちゃん・・・・・・?どうして・・・・・・・・・いたっ」
「どうしても何もねぇだろ!仕事ほったらかしやがって!!皆心配してっぞ!?」
「皆・・・?」

殴られたのも痛かったが、それよりも自分の隊の仲間たちを思い出して、更に涙が零れ落ちた。きっと帰ったらみんなの信頼がなくなっていそうな気がして。
ここ最近休みがなくて、おばあちゃんにも会えなかったから、と涙ながらに語る桃。いつもは冬獅郎と桃が両方非番の時に訪ねていたが、数週間互いに非番が取れず、ずっと来ていなかった。桃は仕事にノイローゼになったのか、気づいたらここに来ていたそうだ。
おばあちゃんに会い、冬獅郎に会い、泣くだけ泣いて気持ちが落ち着いたのか、もう涙は零れていない。

「ごめんなさい・・・」
「謝るのは俺じゃねぇ、隊の奴らだろ。探してっぞ。隊長がいない今、隊員の頼りになるのは雛森、お前なんだ。しっかりしろ」

強い言葉で言いつける冬獅郎だが、真っ直ぐ優しさを表現できない不器用な彼なりの優しさの見え隠れする台詞に、桃自身もようやく本当の落ち着きを取り戻していた。
その言葉をもう一度自分の胸の中で言い聞かせ、冬獅郎の顔を真っ直ぐ見る。

「そうだよね。うん、ごめん!もう大丈夫。皆にも謝らないと!」
「・・・ふっ、戻ったみたいだな。・・・・・・ばあちゃん、悪いな、邪魔して」
「・・・今日はここにいなさいな。外はもう真っ暗だよ」

言われ、二人は外を見ると既にもう真っ暗で、点々と明かりがついているのが見えるくらい。確かにこのまま帰っても危ないだけだし、もう隊員達も帰ってしまっていて隊にはいないだろう。
おばあちゃんの言うとおり、二人は今晩、久しぶりにここに泊まる事にした。

「そうだばあちゃん、伝言だ。俺に旅立ちを促した人から」
「あの子だね・・・」
「あぁ。『いつまでもお元気で』と伝えろって言われたのをずっと忘れてた」
「そうかい。会ったんだね」
「あ、あぁ」

ばあちゃんが少し微笑んだ。それだけで冬獅郎も自然と微笑みを取り戻していった。



その夜は久しぶりにくつろいだ。桃の隣り、布団に入り、冬獅郎は慌しかった今日一日の事を思い出していた。しかし一日の終わり、かなり久しぶりにばあちゃんに会えて桃も落ち着いて、冬獅郎自身も安心していた。
本当はこうなる事は予想していて、桃を探し回っている最中、五番隊の三席の子に桃の明日の非番許可を取っていたのである。
そんな事を知らず、能天気にすやすや眠る、桃の久しぶりに見た落ち着いた寝顔を、冬獅郎はただじぃっと見つめていた。

戻る
小説メニューに戻る