White Chick
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「探しに行かないんですか?」
「すれ違いになっても嫌だから、これが片付いたら探す」
乱菊は心配で尋ねたが、冬獅郎の方は仕事のし過ぎでか、桃の事なのに珍しく冷静に答えた。
「じゃあ私もお手伝いします。早く片付けて雛森探しましょう。その間にひょっこりここへ来るかもしれませんし」
一人で探すより、二人で手分けして探した方がこの場合は良さそうだと二人は意気投合した。自分の隊にいないのであれば、探すのは一苦労である。尸魂界は広い。一筋縄ではいかないのはわかっていた。
それにしてもなぜあんなに真面目な桃が、仕事を放棄して隊を抜け出したりしたのだろう。それも人の目につかないような所であろう。
二人が再び仕事を始めて一時間がたっても、桃は十番隊に現れなかった。
不安が隠せず、乱菊は急に立ち上がり、今までまとめた書類の入っている棚をあけ、五番隊に持って行かなければならない書類を全て集め、冬獅郎の前に立った。
「私、五番隊行って様子見てきます。しばらくお待ち下さい!」
いつも以上に動きが速い。普段なら仕事などせず寝転んでいるのだが。それだけ心配なのだろう。
さぼりてぇだけだろ、そう呟く冬獅郎だが、そういう彼が一番心配していた。しかし、まとめると自分で言ってしまったから仕事は放棄出来ない。それにあと数枚で片付く。
最後の一枚を仕上げ、背伸びをしたのと同時に、執務室の扉が開いた。どうやら五番隊に様子を見に行った乱菊が戻って来たらしい。
「終わったみたいですね。探しに行きましょう」
その一言で、桃が自分の隊に戻っていなかった事は聞かなくても分かった。あえて辛くなる言葉を使わなかったのだろう。
隊の事を部下に頼み、二人は手分けして桃を探しに出かけた。
よく桃が寝転んでいる木陰、広場、銭湯、自室・・・。彼女が訪れる可能性のある、ありとあらゆる場所を念入りに探した。勿論銭湯や自室は乱菊が探したが。
集合場所として手っ取り早く選んだ十番隊に戻って来た二人は、顔を見合わせ、互いに首を横に振った。
「何処へ行ったんでしょう・・・雛森・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「何か、心当たりありません?」
「・・・・・・なぁ、松本。頼みがある」
「何ですか?」
「俺は、これから潤林安に行く。今からだから、もしかしたら明日までに帰って来れないかもしれない。その時は、隊の事頼む」
「潤林安って・・・まさか、流魂街ですか?」
「他にもう雛森がいそうな場所がねぇ・・・」
「・・・・・・わかりました。それじゃあおばあさんによろしくお伝え下さい。それと、お気をつけて」
もう他に手はない、という考えが冬獅郎の表情から読み取れる。いつも以上に不安そうな顔付きをしていた。尸魂界の中には、もうほとんど探す場所はない。残っている場所は数箇所だから、この後とりあえずそこを探そう、と乱菊は考えていたが、その考えは消され、冬獅郎に託す事にした。
その代わり、明日は冬獅郎を非番にさせた。ここ数週間休みなしだったから、一日くらい休みもないと持たないだろうし。自分は何日か休みを貰っているので、と冬獅郎を安心させるのが一番だと感じたのだ。
「ありがとう、松本。あとは頼む」
「そちらも」
そして二人はその場を後にした。
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