一心不乱な思い
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「はぁ・・・やっと着いた。・・・・・・・・・雛森ー!いるかぁ?」
出来るだけ大きな声で五番隊の前で叫んだ。すると俺の背後から手が伸びてきた。
「うわぁ!」
「驚いた?」
「な、何すんだよ!」
「それはこっちの台詞。人の隊舎の前で大声で名前呼ばないでよ。」
意外と普通で、俺が心配する事ではなかったみたいだ。安心した・・・筈だったが、何だかまだ、物足りない気がする。
その感情が俺の表情を変化させ、逆に雛森に心配された。
「どうしたの?」
「あ、いや・・・なんで昨日と一昨日来なかったんだ?」
「何よ、いつも邪魔扱いするから行かなかったのに!」
そうか・・・自分のせいだったのか・・・何故俺は邪魔扱いしてしまったんだ?
自分の心を制御しきれない。何故だ?何故なんだ!?何故お前の前にいると自分の心を保てないんだ!!?自分が何を思って何をしたいのかまでわからない。
この気持ちの高ぶりを何と言うのだろうか。自分でも分からない。気持ちを抑え切れなくて、気がついたら俺は雛森を思い切り抱きしめていた。
「ど、どうしたの!?」
その質問の答えは自分でもわからない。何故か急に、雛森を抱きしめたくなった。何故なんだろう・・・。
しかし、これだけは分かる。俺は、雛森を失いたくないのかもしれない、それだけは。それだけ分かるから、次の言葉が言えるんだ。
「雛森・・・絶対護るから。」
どんな敵が待ち構えているのか分からない。でも、どんな奴が敵でも護らなければならないんだ。
なんでそう思ったのかはわからなかった。でも、自分の心が持つ希望は、それだと思った。失いたくはないんだ、そうだろ、冬獅郎・・・。
この心に誓う 絶対雛森を護ると
この刀に願う 雛森を護ってあげろ
一体、雛森は俺の、なんなんだ?ただの幼馴染みじゃないのかもしれない。
ただ、わかるのは、俺の心に宿るこの思いはただの「思い」だけではない。そう、お前を抱いた時に感じた、この心の乱れ・・・。雛森の事だけに心を注いで、他の事は気にもしない。きっとこの感情を言葉で表現しようとするなら、「一心不乱」と呼べばいいのだろう。
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