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一番大切なお前と…
第七章
それから約数時間後。現世についたばかりの十番隊は辺りを見回していた。一体その虚は何処にいるのだろうか、以前から来ていたと言う十三番隊の朽木ルキアは何処だろうか、と。
とりあえず朽木ルキアを探そう、と冬獅郎は皆を促そうとしたちょうどその瞬間。遠くの方が明るく光った。
「!!」
何事かと皆は光った方へと走った。
「破道の三十一、赤火砲!!」
そこには、少し大型の虚相手に朽木ルキアが霊力の攻撃を放っていた。
「悪い、遅くなった。……霜天に坐せ、氷輪丸!!」
敵を見るとすぐに始解をしてしまう冬獅郎であったが、その始解ですら少し手強い相手だった。
こんなに強い敵がたくさんいると思うと気が気でない隊員たち。それに気づいた郁夏は一生懸命大丈夫だ、と言い聞かせていた。
「それで…あんなのがたくさんいるのか?」
「あぁ。数はわからぬ。だが、この辺に密集しているように思う。何が目的なのかもわからぬし、とりあえず倒す事だけを目標としていたのだが苦しくなってな」
今わかる事を知る為、先程の虚を倒した後近くの木陰でルキアから話を聞いているところであった。
「一人…だったのか?」
「うむ。これじゃあ拉致があかなくてな。すぐ援助を要求したのだ」
冬獅郎たちにもルキアが凄く辛かったのが伝わってきた。自分の父親の隊員を無理させないように、という意味を込めて、これからは自分達もいるから無茶はしないように、とだけ言うと、立ち上がり、迫り来る敵の軍勢に構えた。
「来るぞ。準備しろ」
「はいっ!!」
全員がその場に立ち上がり、全方を見回す。みんな目を瞑り、相手の気配を読み取ろうとしていた。
「来る!北北西からだ!!!」
方角がわかった冬獅郎はそう支持した。そして……………
「霜天に坐せ!氷輪丸!!!」
冬獅郎が刀を持ち、そう叫ぶと氷の龍が飛び出してきた。続いて郁夏が始解を解く。
「紅天に坐せ、鳳凰丸」
上空には氷の龍と炎の鳥が飛んで相手が来るのを待っていた。
その後ろではルキア、松本、大河、浮凛、雅が刀を構えて待ち受ける。いつ、何処から出てきてもいいように。
すると冬獅郎の言った通りの方角から敵が現れた。8体いる。
「俺が2体、俺以外は一対一で大丈夫だよな!?」
冬獅郎はそう言うと、相手をこちら側におびき寄せる。
「行っけえぇぇぇ!」
氷を相手に向けて放ち、そして急いでこちらへと戻る。
「あの中の一体に向かって。おやりなさい」
続いてこちらへと向かってくる虚の中の一体に向かって郁夏は炎を操る。
「じゃあ派手に行くわよ……隊長!避けて!…唸れ、灰猫!!」
続いて松本が刀を灰にして冬獅郎の避けたすぐ後ろの虚に命中。冬獅郎も松本の能力を見るのが初めてだったので振り返りながら驚く。まさか刀が灰と化して攻撃するとは。
「じゃあ俺もっ!降り注げ、水光(すいこう)!!」
「私もよ!!……吹き乱れよ、香風輪(かふうりん)!!」
大河の水光は敵に水をかぶせ、そこを冬獅郎の氷が直撃する。
「これでいいんだな」
「あ、すみません、隊長」
「いいんだ。俺とお前で3体相手にすればいいだけだろ」
そして浮凛の香風輪はカマイタチを作り出し、敵を直撃してその場に倒れさせるほどの威力。みんな圧倒させるような技であった。
「それじゃあ私も行くか。破道の三十三、蒼火墜!」
ルキアの得意な破道が炸裂する。蒼火墜、赤日砲、白雷など。そして、最後に…。
「舞え、袖白雪。…初の舞、月白」
ルキアの斬魄刀解放を見るのが初めてのみんな。目を丸くしてその光景を見ていた。尸魂界で一番美しいと言われている斬魄刀、袖白雪。それは斬魄刀全てが真っ白の刀。それだけではない、地に描かれる円の天地全てがルキアの本来の能力、氷結領域。その空間全てを凍らせてしまう、という、美しく且つ恐ろしい攻撃なのである。
それでは、と最後に斬魄刀を解放したのは、十番隊の雅である。
「行きます……自然と一体になれば強くなる、自然と触れ合えば華麗になる!行きなさい、緑花(みどりばな)!!」
雅の始解。それは実に見事で、唱えるとすぐ、残った敵に向かって多方面から草や花での総攻撃。ツルで足止め、葉と枝での攻撃などなど。その場全員の目を釘付けにしてしまった。
「隊長!早く片づけましょう!」
「お、おう…」
雅の攻撃に圧倒されてしまっていて、今の自分の目的を忘れかけていた。雅の一言で我に返った冬獅郎は、大河との連携プレーに集中する事にした。
それからどのくらい経ったのだろう、全員の総攻撃で残された一体を倒し終えた。
「もう、いないみたいだな。あとからあとから援軍が来るから長引いちまったぜ」
「結局奴らの目的はわからぬままだな」
ルキアは溜息を零しながら、暗くなってしまった空を見上げていた。そこにはいくつかの星が瞬いていた。
「そろそろ、尸魂界に帰るか」
「そうだな。ここには車谷とかいう死神がいたはず。彼に任せておけば安心だしな」
日番谷が立ち上がり、ルキアはもう心配ないだろう、と付け加えて尸魂界へと戻る事にした。
「只今、現世から戻ってまいりました」
「どうじゃった?」
尸魂界に戻ってすぐ、日番谷、松本、ルキアの3人は報告の為に一番隊に赴いていた。行く前とは違い、少しは総隊長の霊圧に慣れたようで、ギクシャクした感じは日番谷には見られなくなっていた。
「はい、虚の軍勢の目的はわかりませんでしたが、空座町の安全は守る事は出来ました。あとは、担当の車谷に任せておけば大丈夫かと…」
「そうか、ご苦労じゃった。下がっても良いぞ」
「はい、失礼しました」
三人は総隊長に一礼して部屋を出た。途中まで共に帰り、ルキアは十三番隊へと向かった。